速記録の持続  

2010年 5月22日(土)

 仕事のやり方が変わっても、やらなければならないことが同じであれば、今ま でと同じ能力を必要とする。
 国会の速記に従事するための最低条件は、速記技能検定1級合格であり、これ をクリアしないで、この仕事に従事することは無理だと思う。
 衆議院は今まで速記者を公募してきた。民間の速記者にも門戸を開いてきた。
 その受験資格は速記技能検定1級合格であり、これに達していない人は、受験 することすら許されなかった。参議院については、仮に1級合格者であっても、 養成所出身者でないと採用されなかった。
 もちろん、速記が全く書けない人でも、採用されてから速記の練習をして、1 級速記士になり、速記者として対等に仕事ができるようになる可能性はある。
 しかし、それは、希望的観測であって、必ずできると断言はできない。
 国会の速記は精度100%を要求される。
 精度98%以上の速記反訳能力と録音・録画等との照合により、精度100% の仕事をすることができる。
 記録部に配属された人のほとんどが1級速記士になっているというのなら、内 部努力で何とかなるかもしれない。しかし、この35年、部長以下1人も速記検 定1級には合格していない。速記が書けない人は何年記録部に在籍しても速記が 書けるようにはならないというのが実態である。速記の書けない人が速記の練習 をして速記検定の1級に合格して速記者として仕事をしたという例は過去に全く ない。
 教える人もいないし、教わろうとする人もいない。
 速記を練習する時間や速記を勉強するチャンスはあると思うけれども、教える 方にも教わる方にもやる気がない。
 このような状況の中で、部内で速記者を育てながら速記録作成業務を今までど おり継続していくということは至難の業である。
 養成所が閉鎖されて大分たった。
 かなり仕事がきつくなってきたのではないだろうか。
 後輩が入ってこないと地位もなかなか上に上がっていかない。
 仕事はきつくなるばかりである。
 やはり、従来どおり、全国からやる気と素質のある人を集めて速記の特訓をし ないと、放っておいて人材は育たないのではないだろうか。
 T種とかU種とかV種とかということは関係なくて、T種の人でも速記の勉強 をしないと速記が書けるようにはならない。
 自分たちには関係ないことという考え方では、何年たっても書けるようにはな らない。
 国会は、全国の自治体の見本となるよう、今までどおり全会議について速記録 を作り続けなければならない。
 正確な会議の記録を残すことは、事務局の仕事の基本である。
 速記者の養成をストップして何年もたったが、このままの状態を放置すると、 過労で倒れる速記者が出てくるだろう。速記者がぼろぼろになってしまってから では遅い。
 速記者の養成を真剣に考えなければならない。
 速記の学習を省略して、正確な速記録の作成はない。
 いまだに誰一人速記者以外で速記録作成業務に従事している人はいない。
 希望者もできる人も一人もいないということである。
 新人だったら何とかなるとは、とても思えない。
 人間の耳は、うんと離れていても聞こえるが、マイクだと近くの音しか拾えな い。
 画像も、4台テレビカメラがあっても、放送されるのは1台のカメラの映像だ けであり、3台のテレビカメラの情報はカットされている。
 テレビの録音も録画も100%ではないのである。100%ではないものに基 づいた記録が100%であるはずがない。
 今後も現場の速記は必要だと思う。
 速記者の目と耳でしっかりと現場を確認する必要がある。
 速記を省略して反訳方法を変えれば速記の学習は必要ないという考え方は間違 っている。
 速記を省略して速記録はあり得ない。
埼玉の速記兄ちゃん